【目次】
無理な決め事は長続きしない。
パート・アルバイトを十分に活用し、戦力化するにはまず、彼らが働きやすい環境をつくることが大切です。
では、働きやすい環境とは何か・・・
①勤務時間の選択ができること
②すべての仕事が標準化され、会社のスタンダードがわかりやすい形で示されていること
③評価・待遇の制度が確立されていること
の3つの要素を満たしていることです。
まず①の勤務時間ですが、お店で働くことは彼らの生活の中心ではない、ということを念頭に置く必要がある。
とくに主婦のパートタイマーの場合は、何といっても家庭が第一です。主婦が一定の時間、家庭を留守にすれば、大なり小なり家庭に不便をもたらすことになる。また、家事があるから、どうしても出勤が無理な時間帯も出てくる。
したがって、主婦のパートタイマーを雇う場合は、本人の意向だけでなく、必ず家庭の同意を得るようにしなければいけない。家庭の協力が得られなければ、遅刻や早退、欠勤が増えて、結局は長続きしないのです。
一方、学生アルバイトだから、時間が自由になるというものではない。曜日によって授業の時間が異なるだろうし、サークル活動をしていればその制約もある。
それなのに、なんとかなる式(お互いに)で無理な取り決めをしても、所詮は無理なものは無理です。遅刻や欠勤が続いたりして居づらくなり、やはり辞めてしまうのです。
また、パート・アルバイトにとっては、1か月にいくら稼げるかが大きな関心事です。働く目的によって1か月の目標金額も違ってくる。
採用に当たっては働く目的と目標金額を確かめ、彼らが安心して働けるようにしてあげることが大切です。
店長の力量がはっきり出る
次に②ですが、誤解してはいけないのは、社員とパート・アルバイトでは、教育・訓練の仕方が違うということです。
社員とパート・アルバイトは仕事が同じといったが、それはサービス業としての基本の部分で同じなのであって、当然、仕事の内容や範囲が違ってくる。しかも、パート・アルバイトは勤務時間が短い。非常に限られた時間内で教育・訓練し、即戦力にしなければならない。
したがって、パート・アルバイトの教育・訓練では、店長の力量がはっきりと出るわけだが、その力量とは、たんなる教え方の優劣だけではない。合理的な訓練を行うためのシステムづくりができるかどうかということが、大きな問題となる。
まず、社員と比べて仕事の範囲が狭いのだから、マニュアルもパート用のものを別に作成しておく必要がある。余計なことを覚える必要はないのである。
よく「便利屋」的にパート・アルバイトを使おうとする店長がいるが、仕事の範囲が明確でなければ、確かな目標を持てないために習得スピードが遅くなるし、仕事にイヤ気をさす原因ともなる。
訓練時間を短縮するには、メニュー名や価格の暗記は宿題にして、自宅でやらせるべきである。もちろん、標準暗記時間を設定して、その分の時給は払わなければいけない。
店長は間違いを発見したらその場で指摘しなおす
作業の標準化とは、お店のサービスの基準がはっきりしているということです。そして店長は、その基準どおりに教えること、これが訓練の絶対条件です。
かりに店長が何らかの理由で交替しても、会社のスタンダードが変わらない限り、サービスの基準も変わってはならないのです。
ところが、店長が変わったことで、それまで通用していたやり方を否定され、それが原因で辞めていくパート・アルバイトが少なくない。
また、店長の教えたやり方と、同僚・先輩のやり方が違うというのもあってはならないことだ。これでは、パート・アルバイトは誰のいうことを信用していいのかわからなくなってしまう。
そうならないためには、店長はつねに部下全員の仕事ぶりを観察し、少しでも間違っているところを発見したら、その場ですぐに指摘して直させるようにしなければならない。
早く現場へ出してOJTだ!!
パート・アルバイトを即戦力にするには、とにかくできるだけ早く、客席の現場に出すことです。ひととおりの接客技術を身につけていなくても、できる仕事はあります。
たとえば、接客話法をマスターしていなくても、食べ終えた皿を下げることならできるし、このくらいの作業はすぐに覚えることができる。そうした実践で使われることによって、自然と仕事の勘が養われていくものなのです。
もちろん客席に出すことはOJTなのだから、店長はその動きをよく見て、うまくできたらほめ、誤りがあればすぐに捕捉していけなければならない。一般に、最初にマニュアルを渡してひととおりの説明をしただけで、あとは何も教えないというお店が多いが、これではパート・アルバイトは使い捨て、と宣言しているようなものだ。
パート・アルバイトも、飲食店に勤める以上は、早く接客サービスをしてみたい、と思っている。先輩たちのようにうまくサービスできるようになりたいと思っている。
しかし、なかなか覚えられなければ、そういう気持ちはどんどんしぼんでいってしまう。従業員のやる気を引き出すことをモチベーションというが、せっかくあるやる気の芽を摘み取ってしまうのでは、それこそ本末転倒です。
納得できる評価をつくろう
どんな仕事でもその結果を評価してもらえなければ、仕事への意欲はなくなっていく。人間は本質的に、他者から評価されたいと思っているものなのです。
評価されたいからこそ、早く覚えよう、もっと上達しようと努力する。だから、OJTでのキメ細かい評価が大切なのだが、一応の仕事をつけて1人前に働けるようになると、ただほめられるだけでは満足できなくなる。
当たり前だ。彼らは趣味やボランティアで、お店で働いているのではない。目的は収入を得ることです。これは、あなたを含めてすべての働く人にあてはまることです。給与に反映されないような評価は、真の評価ではなのである。
ところが、パート・アルバイトに対する評価制度のあるお店、会社はいまで少数派です。
社員は毎年昇給していくのに、パート・アルバイトは何年経ってもほとんど昇給しない、というお店が圧倒的です。これで彼らにやる気を出せといっても、それは無理な話である。
きちんと教えられ、すぐに仕事を任され、努力しだいで給与が上がるという仕組みがあれば、彼らは素晴らしい戦力に育っていくのである。
そして、従業員1人当たりの生産性が向上すれば、当然、値上げなどせずにとも、彼らに高い時給を払うことができるのだ。